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AI音楽アーティファクト(金属音・高域ノイズ)とは何か、honenukiはどう測って除去するのか

AI音楽アーティファクトとは、生成ツールが出力に残す残留物です。周波数軸に沿って一定間隔で繰り返す微かなスペクトルピークと、高域に敷かれた平坦なノイズの床。EQやコンプでは隠せても取り除けません。ピークが音楽と同じ帯域の中に座っているからです。取り除くには、まず周期的な格子を見つけ、実際にそこにあるピークだけを狭い帯域ごとに減衰させる必要があります。honenukiが行うのはそれで、そのあとサチュレーション・ディエッサー・エアで質感と高域感を戻します。

最終確認 2026-09-02

SunoなどのAI生成ツールでなぜこの音が出るのか

特定モデルのバグではなく、構造から出てきます。生成オーディオモデルは出力をアップサンプリングで作ります — 圧縮された内部表現を、転置畳み込み(デコンボリューション)層を通して波形の大きさまで繰り返し拡大する方式です。Afchar らはこの層が体系的な周波数アーティファクト、すなわち小さいながら明確なスペクトルピークを生むことを数学的に証明しました。画像生成でおなじみのチェッカーボードアーティファクトの音声版です。重要なのは、この現象が学習データや重みではなく選んだ構造そのものから導かれる点です — プロンプトを変えてもジャンルを変えても引き直しても残る理由がここにあります。研究チームはオープンソースのモデルと商用生成ツールである Suno・Udio で確認し、このピークだけでAI生成音楽を複数の条件で99%を超える精度で見分けられることを示しました。 同じアップサンプリング構造は、これらのシステムがデコードに使うニューラルオーディオコーデックの中にもあります。SoundStream 系の残差ベクトル量子化(RVQ)で作られたコーデックです。音のもう半分はここから来ます — コーデックは聞こえないと判断したものを捨てて残りを復元するため、ディテールがあった場所に平坦で静的なノイズの床が残ります。こうして二つが同時に生じます。鳴る周期的なピーク構造と、その下に敷かれたヒスです。どちらもステム書き出しで生き残り、通常のミキシングを経ても残ります。

機序と検出基準:Afchar, Meseguer-Brocal, Akesbi, Hennequin (2025), “A Fourier Explanation of AI-music Artifacts”, arXiv:2506.19108。コーデックの背景:Zeghidour et al. (2021), “SoundStream: An End-to-End Neural Audio Codec”, arXiv:2107.03312

honenukiの動作原理

エンジンを支配する5つの規則です。一般的なノイズ除去と分かれる点なので、そのまま記します。

切る前に格子を見つける

一定間隔で繰り返すピーク(よく見るモデルでは約200 Hz間隔)と、コーデックのカットオフ直下の平坦なノイズフロアを探します。格子が見つからない場所では何も減衰しません。

広くではなく狭く切る

検出したピークの周辺だけを狭いノッチで減衰させます。広帯域のハイシェルフは使いません。減衰量は明瞭度帯域で8 dB、高域で15 dBに制限され、判断が外れても被害が小さく収まります。

マスクは順次の積ではなく最大値で合成する

強度・ディエッサー・ヒスはそれぞれ減衰マスクを作ります。順に掛けるのではなく、各点で最大値を取って合成します。掛け合わせると減衰が累積して穴が空きますが、最大値なら最も深い理由ひとつが勝ち、重なりません。

残差は何かを足す前に計算する

REMOVEDモニターは、サチュレーションとエアを足し戻す前に取得した本物の差分信号です。何が変わったかではなく、何が抜けたかを聞かせます。

ドラムは別扱いにする

ドラムのステムは高域減衰の上限を下げ、トランジェント付近の減衰量を減らします。同じ設定でもアタックとシンバルが潰れないようにするためです。

各ノブの役割

6つです。3つは取り除き、2つは戻し、1つは耳のためだけにあります。

取り除く

強度 (Strength)

検出したピークでノッチをどれだけ深く掘るかを決めます。表示の既定値は40です。表示値2を下回るとノッチの深さが0にフェードするため、ノブを最下段に置くと「少し処理」ではなく本当に無処理になります。上げてもノッチは広がらず、深くなるだけです。

既定40 ・ 上限8 dB(明瞭度帯域)/ 15 dB(高域)

ディエッサー (De-ess)

耳につくサ行を抑える歯擦音の減衰です。アーティファクト除去とは独立で、どのステムでも使えますが、ボーカルと判定されたステムでのみ既定0.3、それ以外は0です。マスターには掛けません — ミックス全体をディエスすると、その帯域を共有するすべての音が傷みます。

ボーカルステム既定0.3、その他0

ヒス (Hiss)

高域ヒスのサプレッサーで6〜14 kHzで動作し、上端にコサインテーパーを掛けて境界で音が急変しないようにします。S/N比に応じて開閉する動的ノイズゲートと、固定ピークを狙う常時 comb ノッチを併用します。ゲートは最大設定で40 dBまで減衰し、comb ノッチは20 dBに制限されます。

6〜14 kHz ・ ゲート最大 −40 dB ・ comb ノッチ最大 −20 dB ・ 既定ノブ0.1 = −4 dB

戻す

サチュレーション (Saturation)

除去のあと密度を戻す3バンドの倍音生成です。値はゲインではなく目標歪率(THD)で、プリセット(WARM・PRESENT・AGGR)がどの帯域をどれだけドライブするか、偶数・奇数倍音の比率を決めます。既定は0なので、求めない限り何も足されません。

既定0 ・ 値は目標THD % ・ プリセット WARM / PRESENT / AGGR

エア (Air)

除去が一緒に持っていった高域感を戻すシェルフです。表示はオリジナル比の純増なので、0 dBなら出発点に戻ったということ、その上は元になかった明るさを足していることになります。コーデックが捨てた周波数を作り出すわけではありません — 残っているものを持ち上げるだけです。

−2 〜 +20 dB ・ 既定 +1.0 dB

試聴専用

ゲイン (Gain)

モニター音量専用です。聴き比べ中の大きさだけを変え、レンダーからは意図的に除外されているため、ここで何をしてもダウンロードするファイルには入りません。

−24 〜 +12 dB ・ ダウンロードには一切反映されない

honenukiが行わないこと

数値

項目
検出する格子間隔約200 Hz
ヒス処理帯域6〜14 kHz、上端はコサインテーパー
ヒスゲートの深さノブ1.0で最大 −40 dB(既定0.1 = −4 dB)
常時 comb ノッチ上限−20 dB
ノッチ減衰上限明瞭度帯域8 dB、高域15 dB
強度の既定値(表示)40
エアの範囲 / 既定−2 〜 +20 dB / +1.0 dB
マスクの合成最大値 — 順次の積は行わない
残差の計算時点サチュレーション・エアを足す前
入力形式WAV, MP3, FLAC, AIFF
出力WAV(およびMP3)、ZIPひとつで提供
決定性同じ入力・同じ設定ならビット同一のファイル
試聴ブラウザ再生 = ダウンロードするサーバーレンダー

質問

EQで削るだけではだめですか?

この問題には効きません。ピークが音楽と同じ帯域にあるため、それを捉えるほど広く削ると 音楽ごと削れます。効くのはピークが実際にある位置に狭いノッチを置くことで、そのためにはまず格子を見つける必要があります。

強度は上げるほど良くなりますか?

いいえ。強度はノッチを深くします。ピークが消えた点を越えると、その周辺の素材を食べ始めます。判断基準はREMOVEDモニターです — そこでメロディや歌詞が聞こえたら上げすぎです。

ボーカル以外のステムでディエッサーが既定オフなのはなぜですか?

歯擦音はボーカルの問題であり、ドラムやシンセのステムをディエスすると、その帯域を共有する音だけが理由なく削れるからです。必要なら、どのステムでもノブは使えます。

マスターにディエッサーのノブがないのはなぜですか?

ミックス全体にディエッサーを掛けると、声だけでなくその帯域を共有するすべてのソースに作用します。ディエッサーはボーカルのステムで掛けるべきもので、だからマスターではなくSTEM別の編集にあります。